年末にハマった本がこれ。
ジャンルでいうとファンタジーになるのだろうか。
もう大分前の作品なので、今更感があるのだが
これまで出会えずにいた。
作中には
実在しない国や生き物たちが登場してくるのだが、
主人公の生き様を通して
人間とは、国家とは、戦争とは、といったところを
問いかけてくる(と思う)。
そして、様々な謎が少しずつ明かされ、
最大の謎がクライマックスで明かされるという点や、
主人公がこの先どうなるのか気になって気になって仕方なく、
中断することなく一気に読み進めてしまった。
いつも思うのだが、
小説家って凄いなあと思う。
全体の構成を考え、伏線を用意し、登場人物に性格を与え、
一つの空想世界の構築をゼロから行うのだから。
特にお気に入りの作品に出会えたときは
その感を強くする。
------------
この作品を読んでいて、
物語の本筋に関係の無い無駄な描写や説明が無くて、
非常に読みやすいなあ、という事を思った。
物語「そのもの」に集中できる。
外伝のあとがきで、作者の上橋さんが
「作品に不要な一滴は要らない」と書いている。
もっと登場人物個々のエピソード等を加える事はできるのだが、
作品の美しさを保つために不要な一滴は要らない、
それらを判断して書いている、とのこと。
これを読んで、
自分が感じていることはこれに関係するのかな、と思った。
と言うのは、
いつも色々な作品を読んでいて、
「この説明いるかなあ?」
と思うところがあって、
そういう所にさしかかると物語に集中できない自分がいて、
煩わしさを感じてしまうことがあった。
そういった所は、何となく饒舌さも感じさせてしまう事もあったりして
以前から無意識に自分の中で引っかかっていた。
(単に自分の読む力が弱いだけかもしれないけど・・・。)
ひょっとしたら作品によっては、
元が連載物だった場合に、
字数のことや連載期間のことや
諸々の事情で描写や説明を加えざるを得なくて、
そういった部分ができてしまうのかもしれない。
しかし、
『獣の奏者』はそういったところを全然感じさせなかったので、
そういう意味でも、凄い作品だと思う。
上橋さんの「不要な一滴」という話が
自分が感じていた事にシンクロして、
妙に納得した次第。