遊牧写民

心に残った日常を一枚の写真に

蜜蜂と遠雷について

FUJI XF10

読み終えた。

一昨日の夜から昨晩まで一気読み。

何というか・・・

文学の持つ可能性を認識させられたし、

こういう作品を当たり前のように気軽に読めるって

すごく幸せなことだなあ、って思った。

 

 

浜松国際ピアノコンクールを作者が取材して書き上げられた作品。

浜松はとても身近な街だし、

家内がこのコンクールの大ファンなので、

親近感を持って読むことができた。

 

自分はクラッシックよりもジャズな人で、

ピアノコンクールの事やピアニスト、

そして有名なクラシック音楽の曲などは

ほとんど知らないド素人なのだけど、

それでもこの作品は、

コンクールがどんなもので、ピアニストたちがどう挑み、

各々の曲想がどう感じられるかということが優れた描写で描かれ、

楽しめた。

これ、クラシックに詳しい人が読んだら

それぞれの曲をイメージできて、なお楽しめるのだろうなあ!

(Tお師匠、是非!)

 

作中では「芳ヶ江国際ピアノコンクール」という舞台で

素晴らしい才能を持ったコンテスタント達がしのぎを削るのだけど、

実際の浜松国際ピアノコンクールでも素晴らしい才能を持った

若きピアニストを輩出している(らしい。家内から聞いた。)。

凄い技術や才能をもつ人たちなので、

自分のような凡人には見えない感覚や世界を

見ているのだと思う。

 

そういったピアニスト達の「感覚」や思い、

そして

それぞれの弾く「音」を文字でどう表現するのかが、

自分的にはとても興味があった。

 

なるほど、こういう風に表現する訳ね、と納得。

読み手のイマジネーションを最大限に引き出し、

そして、本来文面からは鳴るはずのない「音」を鳴らす。

そして演奏する人の見ている世界を表現する。

作者のもつイメージを文章化する力に脱帽してしまった。

 

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前回読んだ『獣の奏者』もそうだし、

今回の『蜜蜂と遠雷』もそうだけど、

とにかく文学として素晴らしい。

こういった作品が少しのお金を出せば手に入り、

その世界の素晴らしさを体験できる。

 

そして、この作品はこの後も長い間、多くの人に感動を与えていく。

ピアニストの音源もこの先も残って多くの人の心に残っていくわけで、

同様に、絵画も、写真も、映画も・・・

優れた文化の多くがこの後も伝わっていき、

人々の心に感動を与え潤す。

これらを享受できるこの世界は素晴らしい。

そう思えた作品だった。